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イギリスの大学院で修士号取得後、10年以上、学校・塾向け教材出版社に勤務し、教育現場の「表」も「裏」も知り尽くした、アラフォー男子の教育に関するブログ

アクティブラーニングの導入は賛成ですが、少し心配です。

学校教育

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文科省は2020年から「小学校3年生の英語必修化」以外にも「アクティブラーニング」の導入を決定しました。アクティブラーニングの導入自体は賛成ですが、学校現場や先生がそれに耐えうるだけのスペックがあるかが心配です。

 

まず、「アクティブラーニング」の定義が、人によってさまざまなことです。数年前から教育業界では合い言葉のように「アクティブラーニング」という言葉が出てきて、教材会社もワークブックやテストなどの教師用に付属するCDやDVDで「アクティブラーニング」対応と主張しています(とくにディスカッションが行われるであろう社会の教材)。

 

しかし、具体的に「何がアクティブラーニングなのか」、逆に「何がアクティブラーニングではないのか」に即答できる人はいませんし、人によって言うことが本当にバラバラです。そもそも「アクティブでないラーニングなんて存在しない」なんてことを言っていた先生もいました。

※文科省は「アクティブラーニング」という言葉は使わないことを決定したそうです。

 

一昔前、PISA型学力(OECDが進めている国際的な学習到達度に関する調査)において、日本の小学生は他国の先進国に比べて活用力が落ちるという結果(いわゆる「PISAショック」)が出たとき、それこそ「活用力」という言葉を猫も杓子も使うようになり、全国学力テストが始まるきっかけとなりました。

 

そして小学校のテストを作っている会社は、表紙の宣伝文に「活用力」や「学テ対策」を入れないとその時点で採用されなくなりました。しかし「活用力」の定義なんて、いちおう文科省からの指針はあるものの、各社あいまいですし、作っている出版社の人間ですら聞かれても明言できないと思います。私もできません。そして「学テ対策」と言っても、問題用紙と解答用紙を別にしてるだけです。

 

「アクティブラーニング」の明確な定義がない、そして明確に評価に結びつけることができないなかで、どのように授業を進めるのか? そして、綺麗事を抜きにして「高校受験」対策をしなければならない現場の先生からすると、かなり頭が痛いのではないのではと思います。

 

おそらく、ひとつの事例に対して2つか3つのグループを作り、そこで意見を出し合うということが行われると思います。例えば、1600年の関ヶ原の合戦で単純に徳川家康率いる東軍が勝ったことを暗記するのではなく、東軍と西軍に別れてお互いの立場から関ヶ原の合戦を議論したり、大政奉還で日本はどう変わったかを、議論するみたいなことだと思います。

 

ただ、そんなこと延々と授業中やっていたら、とうてい教科書を教えきることなんて不可能でしょう。いまでも「時間がない、時間がない」とぼやいている先生はたくさんいます。アクティブラーニングの導入は賛成ですが、現行の学習内容を削減しないとかなりの負担が先生にのしかかってきます。

 

おそらくアクティブラーニングを導入しやすい歴史は、現在文科省了承のもと、すでに中学3年生の1学期まで食い込んでいる学校が多いです。さらにアクティブラーニングを導入したら、公民を教える時間はありません。

 

でも、公民はどこの県の入試でもしっかり地理・歴史と同じくらいの配分でテストに出ます。さらに、公民の授業でアクティブラーニングしたら中学三年間で教科書は終わらないでしょう。さらに仮にアクティブラーニングをしっかりやって教科書が終わらず、試験で悪い点を取る生徒が続出したら、間違いなく学校の先生は叩かれるでしょうね。

 

では先生を増員するのかというと、そうでもないようです。教育業界大手のベネッセによると「現在、国会で審議されている2017(平成29)年度予算案では、通級指導や外国人児童生徒の教育などに充てる教職員定数は充実(基礎定数化)させるものの、加配定数は全国で395人の改善にすぎず、しかもAL(アクティブラーニング)分は10人」といった状況です。中学校で必修となっている技術・家庭科のように、ぜんぜん関係のない教科の先生が教えるケースが増えそうです。

 

また、アクティブラーニングの実施って難しいと思うんです。私はイギリスの大学院で学びましたけど、そこでの授業はまさしくアクティブラーニングでした。授業の終わりに推薦図書が書かれている紙をポンと渡されて、10冊くらい読みこんだ上で自分なりの意見をまとめ、それを授業で発表し合い、あーでもないこーでもないとクラスメートで言い合う。

 

余談ですが後期の「英国外交の保守主義について」というすごいマイナーな内容の講義は、先生4人(教授2人、准教授1人、博士号取得者1人)とクラスメートは4人でした。必ず順番が回ってきますし、みんなイギリス人だから辛かったですね。また先生4人が生徒そっちのけで激論することがよくあったんですが(ケンカではありません)、中身が高度すぎてほとんどついていけませんでした。いまでもよく論文が通ったなと思います。

 

話を戻します。発言する生徒についてですが、まずはトピックに対して多少なりとも知識がないと、意見が言えないと思います。「何でもいいから自分の意見を言いなさい」と言われても、知識がなかったら自分の意見なんて出ません。仮に自分の意見を言ったとしても、知識のある同級生に木っ端微塵に反論されたら、もう次から発言はしなくなると思いますし、子どもたち同士の仲が悪くならないかなと心配します。

 

「お互いの異なる意見を尊重することを学ぶことが大事」ともっともらしいことを言いますが、「朝まで生テレビ」の出演者を見てれば、そんなことは幻想に近いと思います。大人の世界でもそうですよね。声を大にした者が勝つ、言った者が勝つ、ことを覚えないかが心配です。

 

さらに、アクティブラーニングは少人数クラスでないと厳しいのではと思います。前述した大学院の授業も生徒が少なかったからできた授業形態であり、大学でもゼミなどの少人数クラスはアクティブラーニングに近い形態です。それを35人学級で行うと、結局、グループでの発表会と大して変わらない内容になると思います。アシスタントティーチャーの導入か、さらなる少人数学級を実現させる必要があります。

 

タイトルにも述べたよう、アクティブラーニングには賛成です。ただ、小学校3年生からの英語やプログラミングの必修もそうですが、現行の学習指導要領を減らさずに新しいことをやろうとするのは必然的に無理が出てきます。「体に良い」と言われる物を食べ尽くして、逆に体調を悪化するような状況にならないと良いのですが。

 

話が脱線しますが、いままでの日本の学校教育ってそんなに悪いですか? 私は「ゆとり教育」に対しても肯定的です。また、日本の学校教育がダメだったら、日本は世界有数の経済大国になっていないと思います。学校教育、とりわけ公立教育はIQ200の天才児からそうではない人、大金持ちの子供からそうでない人を同じように扱い、そして同じ授業をするところです。全体レベルを底上げするところです。万能薬ではありません。

 

再び余談になりますが、全員が大学に入れて「学士」になれるのは日本くらいです。イギリスは100しか大学がありませんので、学士になる敷居は高いですし、はっきり言って日本よりも学歴社会です。また大学の学費もめちゃくちゃくちゃ高いです。

 

もちろん、常に改善していく必要はありますし、教育の無償化など優れた海外の事例を取り入れる必要はあります。個人的意見ですが、教員免許は更新制にすべきで、能力とやる気のない人が一生教師でいられるのはおかしいです。子供たちが可哀相です。

 

また海外のメディアでは自国と比較して、PISA型テストの数学でアジアの国が躍進していることを肯定的に紹介していますし(BBC Asian maths method offered to schools 12 July 2016 http://www.bbc.com/news/education-36772954)、海外のニュースやTEDを見ていても、どこの国でも学校現場に問題を抱えているのがわかります。海外基準や海外の事例を持ち出すのも構いませんが、「日本だって世界の一部」ですし、むしろ教育界では日本基準が世界基準になるように頑張って欲しいです。

 

そして、そのために必要なお金はケチらずに税金をもっと投入すべきでしょう。金も人も出さずに、国や厚生労働省が町医者に「もっと一日に看る患者を増やせ、そしてもっと1人の患者に時間をかけろ」と言っているようなものです。

 

2016年9月15日の日経新聞によると、「経済協力開発機構(OECD)は15日、2013年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める学校など教育機関への公的支出の割合を公表した。日本は3.2%で、比較可能な33カ国中、最下位のハンガリー(3.1%)に次ぐ32位。12年の最下位からは脱したが、依然低い日本の公的支出を示す結果となった。OECD平均は4.5%」。


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